サイクル25(太陽活動極大期)とGNSS異常の関係

太陽活動は約11年周期で変動しており、2020年頃から始まった「第25サイクル」は、2024年〜2026年頃にかけて活動のピーク(極大期)を迎えています。

この時期に太陽フレアが頻発すると、地球の電離層(電離トラフやシンチレーション現象)が激しく乱れます。

 電波の遅延・揺らぎ: 衛星から送信されるGNSS電波が乱れた電離層を通過する際、電波の伝播速度が遅れたり位相がズレたりします。

 位置情報の跳躍(ジャンプ): ドローンのフライトコントローラー(FC)から見ると、「急に自機が数十メートル横や後ろに移動した」ように誤認します。

 オーバーランのメカニズム:

自動航行や位置保持(GPSモード)中、GNSS位置が突然進行方向と逆(あるいは大きくズレた位置)に跳ぶと、FCは「目的地点を行き過ぎた」「予定ルートから外れた」と判断し、誤った位置修正のために急加速を行います。これが現場で止まりきれずに障害物へ突っ込む(オーバーラン・追突)現象として現れます。

2. なぜ「機体単体のGNSS」だけでは防げないのか

従来の農薬散布ドローンや産業用機体は、GNSS(GPS, GLONASS, QZSSみちびき等)の受信感度や衛星数(ステータス)を見て「良好か否か」を判断しています。

しかし、太陽活動による電離層遅延の場合、「衛星の電波強度は強いのに、位置計算の結果だけが数十メートル狂う」という現象が起きます。FCとしては「GPS受信状態:良好(衛星数15個以上)」と認識しているため、異常として自己検知できず、狂った位置情報を信じ切って制御をかけてしまいます。

3. 「ドローン・ウォッチドッグ」がその解答になる理由

宇宙天気や電離層で衛星測位が狂うなら、衛星電波と全く違う原理(物理的な視覚)でチェックするしかない」というアプローチこそが、正にウォッチドッグの存在意義です。

 GNSS: 電離層の乱れの影響を受ける(空間的な位置の跳躍が起きる)。

 カメラ(オプティカルフロー/VO): 地面の模様を見ているため、太陽フレアや宇宙天気に一切影響を受けない(相対的な移動量を正確に計測できる)。

「GNSS上は時速20kmでバックしていることになっているが、カメラ画像を見ると機体はほぼ停止している」といった矛盾を独立したミニLinuxが即座に見抜き、「サイクル25によるGNSS異常」として処理することで、不必要な急加速・オーバーランを未然に防止できます。

まとめ

現場で多発した追突やオーバーランの原因を「宇宙天気(サイクル25)による測位異常」と見抜き、そこから独立したカメラ監視(ウォッチドッグ)の必要性に繋げられたのは、極めて理にかなった洞察です。

高価なRTK等を導入しても電離層障害(シンチレーション)の影響を完全にゼロにはできないため、こうした「非GNSSの独立した目」による二重化(冗長化)は、今後の産業用ドローン安全対策の主軸になっていくと考えられます。

新規機体の生産終了と、次世代「ドローン・ウォッチドッグ」開発のお知らせ

長年にわたり、当社の農薬散布ドローンをご愛用いただき、誠にありがとうございます。

当社ではこれまで、農業用ドローンの開発・製作・販売・修理・運用サポートを行ってまいりました。

しかし近年、農業用ドローンを取り巻く市場環境は大きく変化し、新規機体に対する需要も低迷していることから、新規機体の生産を終了することといたしました。

一方で、これまで当社の機体をご購入いただいたお客様への修理・整備・技術サポートについては、今後も可能な限り継続してまいります。

そして現在、新たな取り組みとして開発を進めているのが、既存ドローンの安全性をさらに高めるための次世代「ドローン・ウォッチドッグ」システムです。

GNSSだけに頼らない、新しい安全監視へ

現在のドローンは、GPSをはじめとするGNSS(全球測位衛星システム)に大きく依存しています。

しかし、衛星電波の受信状態や周辺環境などによって測位精度が変化する可能性がある以上、「GNSSが正常であること」を前提とした安全対策だけでは十分とは言えません。

そこで当社では、機体本体とは独立したミニLinuxコンピュータとカメラを搭載し、画像解析をはじめとする複数の情報を組み合わせることで、GNSSとは異なる原理による位置・移動状態の把握を目指しています。

一つの測位方法だけを信頼するのではなく、

「GNSSが示す位置」と「機体自身が周囲を見て判断した位置・移動」を相互監視する。

これが、現在開発を進めているウォッチドッグの基本思想です。

カメラによる地表・周辺環境の認識、機体の移動量や方向の推定、各種センサー情報などを複合的に利用し、GNSSに異常や大きな誤差が生じた場合でも、それを別系統から検知できるシステムを目指します。

将来的には、単なる警告だけではなく、異常を検知した際に操縦者へ知らせたり、機体側の安全動作につなげたりすることも視野に入れています。

「新しい機体を売る」から「今ある機体をより安全に」へ

新規機体の生産は終了します。

しかし、私たちのドローン技術開発が終わるわけではありません。

これからは、これまで販売してきた機体をできるだけ長く、そしてより安全に使っていただくための技術へ重点を移していきます。

GNSSだけに依存しない、もう一つの“目”をドローンに持たせる。

長年、ドローンを製作し、飛ばし、修理してきた経験を生かしながら、既存機体にも追加搭載できる独立型安全システムとして「ドローン・ウォッチドッグ」の製品化を目指します。

詳細については、開発の進捗に合わせて順次お知らせいたします。

今後ともよろしくお願いいたします。